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2021年7月30日

「エネルギー基本計画」素案 30年度の非化石電源目標6割まで引き上げ

国の次期「エネルギー基本計画」の素案が固まった。2030年度の新たな発電時の電源構成は非化石電源を当初目標の4割超から約6割まで大幅に引き上げる。この中で「水素・アンモニア」の目標値も初設定した。東日本大震災以降、化石電源への依存が高まっていた日本。

世界的に脱炭素化の流れが加速する中で、自動車をはじめ、さまざまな製品で生産や調達など使用段階以外でも温室効果ガス削減が問われる。脱炭素エネルギーへの切り替えは日本の産業競争力を維持する上でも喫緊の課題だが、技術面やコストで立ちはだかる壁を乗り越えられるか、道のりは遠い。

第6次エネルギー基本計画の素案は、経済産業省と資源エネルギー庁が開いた総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で示された。現行目標で30年度に22~24%としていた再生可能エネルギーの割合を36~38%に積み増す。原子力は20~22%の当初目標を維持した。

初めて盛り込んだ水素・アンモニアは1%を見込む。一方、液化天然ガス(LNG)は27%から20%、石炭は26%から19%、石油等は3%から2%と、化石電源は軒並み比率を引き下げた。

今回示された電源構成は暫定値だが、素案の中でも「野心的な見通し」とするなど達成へのハードルが高い実情も裏付ける。事実、19年度の実績で再エネは18%、原子力は6%にとどまる。水素・アンモニアに至ってはゼロで、新たな目標値と現実は大きくかい離している。

この差を10年足らずの期間で縮めるには、イノベーションの創出だけでなく、社会実装も急ぐ必要がある。しかし、多額の費用がかかれば電気料金の上昇に直結し、産業界では製造コストに跳ね返る。これにより価格競争力が弱まれば、輸出で稼いできた日本企業の収益構造を揺るがしかねない。

再エネ頼みも不安材料の一つだ。太陽光は夜間の発電が期待できないほか、風力も発電量が自然に左右される。関係省庁では30年度の再エネ発電量を積み増そうと動いているが、大規模になればなるほど、電力の安定供給に必要な調整電源も大きくなる。

クリーンな調整電源は当面、原子力が頼みの綱だが、国内世論にも配慮し、次期計画では原子力発電所の新増設を盛り込まない見通し。既存原発の活用が計画通りに進まなければ、電力供給の不安定さが高まる懸念もある。

電源構成の見直しは政府が打ち出した30年度の温室効果ガス削減量を13年度比で従来の26%減から46%減とする目標修正を受けてのもの。同分科会では今後も議論を進め、詳細を詰める。今年11月には「国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)」も控えており、このタイミングまでに次期計画を閣議決定したい考えだ。

カテゴリー 会議・審議会・委員会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞7月26日掲載