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2021年5月20日

中古車販売の不当価格表示 支払総額の明示化求める動き強まる

中古車販売で不当な価格表示を廃し、支払総額の明示化を求める動きが強まっている。自動車公正取引協議会(公取協、神子柴寿昭会長)が会員向けに行った支払総額表示に関するアンケートで、「表示することにした方が良い」との回答は5割を超えた。

4月下旬には不当な価格表示を行った販売店1社に警告を発出した。公取協では近く消費者向けのアンケート調査結果も公表し、ユーザー意識や実態を踏まえて対応に乗り出す構えだ。

ここ数年、中古車小売りで車両本体価格を安く抑えながら、諸費用などの積み上げで支払総額を高額化する事例が目立っている。背景には、ネットを活用したクルマ選びの普及がある。

購入条件としてクルマそのものの好みに加えて予算も重視する傾向が強いだけに、ネット上での表示価格の安さはユーザーを惹きつける最適の手段となり得る。ただ一方で、こうした手法は「不公平」と是正を求める中古車事業者の声も根強かった。

公取協のアンケート結果では、支払総額を実施していない回答者の理由(複数回答可)として「価格が高く見えてしまうから」(31・5%)、「問い合わせ・商談につながるきっかけが減るから」(14・7%)などが挙がった。意図的に中古車の表示金額を安く見せたい思惑が透けて見える。

実際、車両本体価格以外に「車検見積料」「保険見積料」「メーカー保証継続手続費用」などまで請求する販売店が存在する。この場合、積み上げ方式でさまざまな諸費用の支払いが車両を購入する上で必要になる。

広告や店頭で割安に表示し、商談の際に高額な諸費用や保証、オプションを購入しなければクルマを販売しない、あるいは言葉巧みに誘導して購入を強いるもので、近年はこれに起因した消費者とのトラブルが増加している。

アンケート結果では、支払総額表示にした場合に必要と考えられることとして、「事業者への周知徹底」(64・5%)、「諸費用の明確化」(58・1%)、「違反行為に対する罰則強化」(40・4%)を指摘する意見が目立った。

中古車の価格表示に関する明確なルールや基準を設けることに加え、「正直者がバカをみる」ことがないようにすることが求められる。

日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連、海津博会長)でも、支払総額表示に対する問題意識を強めている。

松本富男指導環境担当副理事長(JU福井会長)は、不当な価格表示が増えている背景について「諸費用の値引きを求めるユーザーが少ないことも(積み上げで支払総額を高額化する)傾向を後押ししている」と指摘する。

販売店ごとに異なる諸費用を統一することは実際難しいことも事実。車庫証明の有無、オプションの取付、遠隔地への販売の際に係る陸送費用などユーザーごとに千差万別。

税金などの月ずれ、年ずれによる変動を毎月変更する必要もある。しかし、最も重要なことは消費者の保護であり、増加傾向にある不適切な販売行為の撲滅が急がれる。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月13日掲載