| 保坂三蔵対談シリーズ(1)「星野良三・東ト協会長に聞く」 |

首都高速会社の距離別料金案は問題
“ドラレコ”は安全への革命的効果
東京都自動車会議所の保坂三蔵会長(自民党都連会長代行)はこのほど、最近のトラック業界の動向と課題をテーマに(社)東京都トラック協会の星野良三会長と対談=写真=した。この中で星野・東ト協会長は、首都高速道路会社が最近打ち出した距離別料金案に対して、「事実上の値上げ案であり、利用者であるトラック業界としては全然話しにならない」と一蹴するとともに、事故直後の映像を記録するドライブレコーダー(略称・ドラレコ)の効果について、「“安全に対する革命”とも言える効果がある」と指摘、業界をあげてこの導入を促進する考えを強調した。
保坂 石原都政が行っているディーゼル車排出ガス規制では、業界のご協力のお陰で、東京の空が本当にきれいになり、感謝しております。まず、最近の都内のトラック業界が置かれている状況についてお伺いしたい。
星野 私どもの会員の大半は、運転手とトラックを使って事業を遂行する、いわゆる「実運送事業者」であるが、規制緩和が進み、また運賃が安ければ安いほど良いというような社会的な風潮もあって、実運送事業者は非常に困っているのが現状だ。このため、低賃金の労働力に頼る傾向があり、このような状況はどうしても運転手の賃金にシワ寄せが行ってしまう。私は汗水流して物資を運んでいる運転手と実運送事業者に、光を当てたいと思っている。
保坂 最近、首都高速道路会社から高速道路料金を距離別制に移行する案が示されましたが、どう対応されますか。
星野 われわれからすると、今回示された「案」は、首都高速の営業用トラックの利用実態からみると、普通トラックで54%、大型トラックでは82%の利用が値上げになる。値下げで享受できるのは、数%でしかなく全然、話にならない。そこで都知事や都議会議長、国土交通省に対し善処を求めてお願いして回っている。都民生活に大きな影響を及ぼすこととなるので、皆さんと手を携えて、良い方向に持っていきたい。
保坂 原油高の傾向が止まる気配を見せず、燃料高に伴う適正な運賃収受問題に逆風が強まっています。
星野 燃料費の削減はコスト、環境問題に直結しますので、東ト協では昨年度から新規事業の柱の一つとして全国に先駆けて「グリーン・エコプロジェクト」に取り組んでいます。これは各会員事業者の皆さんがエコドライブを実践し、地球環境問題に対応しようというもので、燃費に関するデータベースを構築し、地球温暖化物質のCО2削減を図るというものであります。同時に、このエコドライブ活動を継続的に実施する仕組み作りを進め、環境保全への貢献と経営改善を図ることが目的です。この結果、運転の仕方によっては燃費を1割程度削減できることが分かりました。適正運賃の収受については、このような自助努力をしていくが、これで補えない部分は、最低限、再生可能な運賃をいただくとするものであり、安全問題にも繋がるものともなります。
保坂 ドライブレコーダーの導入にも鋭意、取り組まれていますね。負担が重いにも拘わらず、星野会長の会社(多摩運送(株))の車両にも取り付けているそうですが。
星野 私は、ドライブレコーダーが安全に対する革命(的な装置)だと思っている。人間には、習慣的で無意識的な悪い運転行動があり、これは教育しても直らないものなのですね。例えば安全車間距離ですが、人によって8mだったり10m、あるいは20mだったりする。しかし、ドライブレコーダーの映像に映ったことで、自分のクセが実証され、直すことに繋がるのです。私の会社では1億2,000万円をかけてドライブレコーダーを自社トラック327台に装着しました。この結果、事故の前段であるヒヤリハットがそれまでの月20〜30件から、今では月に3〜4件に減りました。燃費も年間3,000万円改善をみて、4年間で元が取れる計算です。また事故の事後証言では、トラックは基本的に悪者扱いされることが多いのですが、この面でも事故原因が明確になりますので、運転手は導入したことを喜んでいるのが実情です。安全運転に資するため運転手も疲れないし、会社の労働組合も導入に賛成しています。また私自身の事故に対するストレスも減り、いずれ車両に標準装備されるようになるのではないかと思っています。東ト協では会員車両10万台のうち、半分の5万台にドライブレコーダーを装着し、3年間で事故を半減させる計画を進めています。
保坂 税制面では、軽油引取税の暫定税率7円80銭の撤廃を要求されていますが。
星野 私どもは道路を使わせてもらって事業を展開しているので、ある程度の税負担はやむを得ないと思っています。ただ、現状では経営採算の面でギリギリなので、理解していただきたいと思います。特に、暫定税率については、暫定ですので撤廃して欲しいと考えています。
保坂 お客様への新たな要望という点では、どんなものがありますか。
星野 5年後にはトラックの輸送力が不足する時代が到来すると思います。中型免許ができて、大型免許の取得が難しくなる一方で、団塊世代の大型免許所持者が大量退職すると、大型トラックの運転手が足りなくなる、という構図です。現実にトラック需要が増えてきて、供給が足りなくなっています。運賃が安い高いというより、「輸送力の確保が大切な問題ですよ」とお客様に進言しています。物が動かなくなったら、売れる、売れないという以前の大問題ですからね。
保坂 今日はお忙しいところ、時間を割いていただきありがとうございました。
|